
いよいよ本格的になっていく3年生の実習。
先にお話しした母性看護実習と終末期看護実習のどちらを先に履修するかによって、看護学生たちの感じ方も少しづつ変わってくるようです。
赤ちゃんの産声と「おめでとう」の声が聞こえてくる産科フロアでの看護と、生涯を終え、旅立ちの日を迎えた患者さんのお見送りをする病棟での看護。
看護学生はこの2つの実習を短期間に経験し、そのギャップに戸惑うようです。
同じ「看護」であっても、それぞれの役割はまた違ったものとなります。
でも私は、一見全く違うように見えるこれらの2つの看護には大きな共通点があると感じています。
それは、「主人公は患者さんである」ということ。
今の時代、生まれてから死ぬまでの間に、ただの一度も病院にかかったことがないという人はほぼゼロに等しいのではないでしょうか

患者さんにとって、病気や妊娠・出産という理由で入院・退院をすることは人生の大イベントです。
私は看護師の仕事は、それぞれの患者さんの人生の大イベントに携わることができる、まさに縁の下の力持ちのような役割だと思っています。
終末期看護実習はおよそ2週間あります。
プレターミナル(予後半年以内)の患者さんを一人受け持つことになりますが、実習中に担当の患者さんが亡くなり、急きょほかの患者さんを受け持つということもあります。
各診療科の方針にもよりますが、最近はほとんどの患者さんが自分の病名を知っているという場合いが多くなってきています。
インターネットの普及の影響もあり、特に若い患者さんには治療内容や病名について隠す方が難しくなってきていることも関係していると思います。
またネット以外でも、テレビで病気や治療に関する情報を知る機会が増えましたし、自らの闘病生活を綴った書籍も数多く出版されていますね。
予後については、患者さん自身が知りたいと思っていても、家族が本人には言わないでほしいと主治医に伝える場合が多いです。
でも患者さん達は、自分の体調の変化や同じ病名の患者さんが次々に旅立っていく姿を目の当たりにして、少しずつ自分の予後について悟ったり覚悟を決めていったりするようです。
入退院を繰り返すうちに親しくなっていった仲間の旅立ちを、どんな気持ちで見送っているのでしょうか。
看護学生として、このような状況に立たされる患者さんたちとどのように向き合えば良いのでしう。
答えなんてもちろんありません。
私も臨床にいた時、終末期の患者さんとのかかわりについて随分悩んだ時期があります。
患者さんの気持ちに向き合おうと意気込みすぎて、患者さんの言葉の一つひとつの意味を考えすぎたこともありました。
そうしているうちに、なんだか自分の為に患者さんの看護をしているような気持ちになり、ますます「患者さん中心」というところからはずれていくような気さえしました…。
ターミナル期の患者さんはきっと、看護学生にいろんな話をしてくれると思います。
若かったころの事、ご家族の事、今の心配事…。
まだまだ未熟な自分にこんなに深い話を話して下さるなんて…と、ひょっとしたら少し申し訳ないような気持ちになるかも知れません。
でも今になって思うのは、患者さんはまだ「医療従事者」にはなりきれていない、どこか素人くささが残る学生にだからこそ、そのままの気持ちを話してくれたのかもしれないな…と振り返っています。
経験・技術・知識という意味では学生と現場看護師には大きな差がある事は確かです。
でも、「ただ話を聴く」という事に関しては学生の方がうまく出来ている場合が結構あると思います。
実際に働き始めるとただ話を聴くということよりも、その先にある
「何とかしないと」
という気持ちの方が勝ってしまうんですね、きっと。
がむしゃらに頑張っていた学生時代はこんな考えには至らなかったのですが、卒後何年も経ってから終末期実習の時の事を思い出して初めて気づきました。
看護学生さんは、病態生理や看護技術、記録などたくさん課題があって大変かと思いますが、患者さんとお話をしている時には全身で向き合って下さいね

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