
看護学校では点滴のミキシングや滴下調整、三方活栓の使用方法、持続点滴中の患者さんの着替えの方法などを練習します。
でも看護実習中は自分が受け持った患者さんの点滴管理は学生はせず、看護師が行います。
もちろん着替えの時の手伝いや滴下調整などを、看護師の見守りのもとに行うこともありますが。
看護学生の皆さんは、臨床指導者の前で滴下調整の計算をしてクレンメの調節をする時は本当に緊張することと思います

特に計算…。
算数レベルの簡単な計算なのに、いざという時にパニックになるという人もいます

学生時代だけではなく、新人の頃もなかなか滴下調節には慣れないようです。
実際に働き始めると学生の頃とは違って複数の患者さんの持続点滴の管理をしなくてはいけませんし、夜勤の時なんて一人で10人以上の持続点滴の滴下状態を見て回ることになる場合もあります。(もっと多い場合の方が多いかもしれません)
点滴ボトルがメイン1本だけならまだしも、側管の持続ボトルも複数吊り下げられていて、それぞれ違った速度で落ちていることも珍しくはありません。
これにはもう慣れるしかないですね

病棟で起こる事故の中でも転倒・転落事故に次いで多いのが、この輸液に関するトラブルです。
過剰輸液(指示の速度よりも早く滴下してしまうこと)や点滴の種類の間違い(他の患者さんの点滴を吊ってしまう)、点滴の施行忘れなど…。
書いているだけで怖くて心拍数が上がりそうですが、これらの事故が現実として病棟内で発生しているのです

今回は現場でよく起こりがちな点滴中のトラブルと対処法についてお話します。
看護学校ではここまでは習いません…というか習ってもわからないかも知れません。
実際に現場に出てから、何人もの患者さんの事例を通して毎日経験を積むしかありません。
@点滴が落ちない
点滴が落ちない場合、一番に疑う事は何でしょうか

そう、針が血管内に正しく留置されていないかもしれないという事ですね。
針の先端が血管内から外れた場合、患者さんは痛みを訴えるはずです。
刺入部を見ると腫れてきているかも知れません。
逆血確認(クレンメを全開にしてボトルを下げる、又は三方活栓からシリンジをつないで引いてみること)をしても血液が返ってこない場合、速やかに抜針しましょう。
この時の対処は看護学生や新人看護師でもすぐにわかると思います。
(学生でも3年生になれば抜針できます。その時は必ず自己判断せずに、指導者や看護師に報告してから抜針しましょう。)
でも、実際によくあるのは次のパターンです。
患者さんに点滴が落ちないと言われて見ると、滴下が止まっています。
「全然痛くないよ。さっきちょっと動いたら急に止まった。」
と、患者さんは言っています。
刺入部を見ても全く腫れはなし。
一体どうしたんでしょうか

こんな時に慌ててすぐに抜く前に、必ず試してみて欲しいことがあります。
まず逆血の確認。
これで血管内に針の先端があることが確認できたら、針基を少し押さえてみたり、持ちあげてみたりしましょう。
これだけで止まっていた滴下がテキテキと落ち始める事もしばしばあります。
実はこれ、針の先端が血管壁にちょうど当たっていて、薬液が血管内に注入されていない時に起こる現象なんです。
そういうときは慌てずに針の角度を変えてみましょう。
針を持ちあげた時の方がよく滴下する時は、針基の下にアルコール綿を折りたたんでかませてからテープで固定するとよいでしょう。
逆に針基を押さえた方が方がよく落ちる場合は、針基を皮膚に押さえつけた状態でテープ固定しましょう。
この、針の先端が壁にぶつかって…という状況は、点滴以外の場面でもよく起こります。
腹水抜水中に針の先端が腸管にあたって滴下が悪くなったりするように…。
滴下不良を起こしている時は慌てて抜針するのではなく、
「もしや壁にあたってるかも…

と予測して、落ち着いて対処してください。
刺し直し回数を最小限にとどめることで、患者さんの苦痛を減らしてあげましょう。
A血管痛
薬液が順調に血管内に注入されている場合、痛みを感じる事はまずありません。
しかし薬剤によって、血管刺激性のあるものを落としている時に痛みを訴える患者さんもいます。
濃い液は浸透圧が高いために血管に負担がかかり、痛みとして感じるというワケです。
ブドウ糖液やブドウ糖を含む液がその代表例ですね。
ブドウ糖液は末梢から滴下できますが、高カロリー輸液になると末梢血管から落とせないというのは静脈炎を起こさないようにするためなんですね。
CV(中心静脈栄養)と言って、鎖骨下静脈に留置を入れて、そこから滴下しなくてはなりません。
末梢血管では細過ぎて、高浸透圧液の注入には耐えられないからです。
例え痛みがあっても、刺入部の腫れや赤みがなければ基本的に点滴を続行してもOKです。
(念のため逆血は確認してくださいね。)
地味〜な痛みなんですが、持続点滴の場合だと長時間に及ぶので患者さんにとっては負担が大きくなります。
なので、濃い液を行っている間は温タオルで刺入部あたりを温めてあげて下さい。
割と即効性が得られます。
ただし点滴をしてから皮膚や血管が痛くなったとき、どんな場合でも温めるだけでいいというわけではありません。
体質にもよりますが、FOY(タンパク分解酵素阻害剤。膵炎や汎発性血管内血液凝固症:DICに頻用されます。)を使用して静脈炎を起こしたり、皮膚潰瘍を起こしたりする例もあります。
患者さんが血管の痛みや違和感の訴えたら必ず皮膚状態を観察してカルテに記載し、主治医に報告してください。
トラブルが起こる前に点滴する場所を変えたり、皮膚科受診をする場合があります。
発見時の対処法ですが、局所の炎症に対して温めるのは逆効果です。
この場合はクーリングして下さい。
B滴下調節
看護学生はもちろん、新人時代も滴下調節に慣れなくて苦労するかもしれません。
こんな悩みを持つ人のために、ナースグッズの通販サイトで輸液ゲージというものが売られています。
計算尺のようなもので、予定量と時間を合わせると一分間の滴下速度が割り出されます。
実は新人の頃、私も持っていました(恥

「これさえあれば大人数の滴下調節も怖くない

と本気で思っていました。
その後研修医に借りパクされたままですが(笑)
でも、すぐに慣れてそんなことしなくてもできるようになりましたよ。
やっぱり看護師は学内で習うことよりも、現場に出てからの訓練の方が重要になります。
勤務の交代〜申し送り、初めの巡回までの間が一番過剰輸液・過少輸液が起こりやすいタイミングです。
ですから、自分の勤務帯の最終の見回りの時にボトルのぎりぎりのところまでしか入っていなかったら、必ず更新してから引き継いでくださいね。
引き継いですぐ、点滴が詰まっていたら、かなりテンションが下がります…

@のところで、血管壁にあたることで急に滴下速度が変わるというお話をしました。
散歩から帰ってきたり、側管の点滴が終了した時には滴下が変わりやすくなっているので、こまめに点検しましょう。
私は滴下調整に命がけ(笑)な方でした。
だって点滴の調節をきちんと行えていなかったら、患者さんだけではなくて自分の後を引き継いだスタッフにもすごく迷惑がかかるから。
患者さんからは
「ホント、時間どおり終わるね…

スタッフからは
「引き継いだ後ちょうど巡視の時間に合わせて終わるようになってる

と言われていました(ちょっと自慢です

職人みたいでしょ

今回は現場でよくある輸液のトラブルについてお話しました。
患者さんへの影響がダイレクトに出る点滴は少しこわいと感じるかもしれませんが、
怖いと思っている位でちょうどいいくらい点滴には危険が付きもの…。
頻度が高い点滴ですが、決して当たり前になり過ぎてはいけません。
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