
がん性疼痛を訴える患者さんに対して医療用麻薬が使用されます。
現在使用されている医療用麻薬にはモルヒネ・オキシコドン・フェンタニルがあります。
これらの薬剤はそれぞれ特徴をもち、投与経路(経口・静注・皮下注・貼用)もいろいろです。
使用薬剤・投与量・投与経路は医師の指示通りですが、看護師は当然それぞれの薬剤の特徴や副作用、取扱方法の注意点を理解しておく必要があります。
医療用麻薬を静注する時、生理食塩水に希釈してから使用しますが、ミキシングをするのは医師の役割です。
(看護師はダブルチェックを一緒に行いますが、薬剤の吸い上げは行いません

でも空アンプルの返却・管理や、実際にシリンジポンプにつなぐのは看護師です。
内服薬や貼用剤は管理・準備・実施を全て看護師で行うことができます。
(処方は医師です。)
医療用麻薬は投与時にも細心の注意が必要ですが、管理も同じくらい大変です

薬局での受取も絶対に手渡し。
薬剤師と一緒に数を確認しながら印鑑を一緒につきます。
病棟に持ち帰ったらカギ付き金庫に入れる前にリーダーとダブルチェック、その内容を病棟薬剤師と師長にも報告が必要です。
病棟内で管理している全麻薬の個数は各勤務最低一回はカウントが必要です

麻薬金庫を開ける必要がない時間帯であっても、必ず開けてチェックします。
麻薬の空アンプルや医師が作成した処方箋も薬剤と同等の扱いが必要なので金庫で管理します。
各施設によって麻薬の管理方法には少しずつ差がありますが、厳重である事には変わりありません。
こんなにも注意していてもやっぱり麻薬に関する事故はゼロにはなりません

現場でよくある失敗や事故についてもう少し詳しくお話します。
@内服薬は飲み込むところまで確認する
直腸癌の疼痛コントロールで入院中の患者さん。
麻薬の量を増量してもなかなか、肛門付近の強い痛みはとれず…

医師・看護師・薬剤師で何度もカンファレンスを開いて話し合いが続いていました。
ある日その患者さんの床頭台の引き出しから大量の医療用麻薬(当時主流だったMSコンチン)が発見されました(笑)
笑いごとではないのですが、これには仰天

私は当時一年目で、いつも先輩から
「麻薬は飲み込むところまで確認してよ

と言われていたので基本に忠実でした(笑)
私が配薬した時は、患者さんが薬を口に入れて飲み込むまでじーっと見ていたので、誤魔化しようがなかったんでしょうか…

「飲んどいてね

と渡しっぱなしだったのはなんと先輩達だったんですね

飲んでいない薬が効くわけもありません。
余談ですが…しばらくしてこの患者さん、痛みがすっかり取れました。
麻薬が効いたわけではありません。
直腸内に留置していたステント(金属製の筒のようなもの)が便と一緒に排泄されたんです。
痛みの原因はガン性疼痛ではなく、ステントによる物理的な痛みだったのです

…とにかく、あまりにもインパクトが強かったこの出来事のおかげで、何年目になろうと私は患者さんが麻薬をのみ込むまでベッドサイドを離れることは一度もなかったです。
医療用麻薬に限らず、配薬したら飲み込むところまで確認するというのは一応基本とされていますが…
(特に高齢者の場合、口の中に薬がくっついている場合があるので、口の中まで確認させてもらう事もあります。)
A空アンプル・使用済みデュロテップパッチの保管
麻薬の空アンプルや使用済みのデュロテップパッチ(貼用式の経皮吸収型の麻薬)を間違って捨ててしまうことがないようにしましょう。
取扱いに慣れていない新人の頃は特についうっかり捨ててしまいがちです。
使用済みのものは麻薬返却伝票(医師が作成したもの)とともに薬局に返納します。
それまでは病棟金庫で保管しなくてはなりません。
もし紛失したら、ゴミ箱をあさってでも探し出します

(恥ずかしながら経験済みです

もしアンプルを割って破損してしまった時は全部拾い集めて返却します。
床にこぼれた薬液は注射器で吸い上げて、これも薬局に返却です。
だから慌てて床を拭いてはいけません

もし麻薬や空アンプルを紛失した場合、都道府県知事に報告になります

そして管轄の保健所から監査が入ります

自分もかなりへこみますが、病院全体にも大迷惑をかける事になるので気をつけましょう。
今回は医療用の麻薬の取扱いを中心にお話ししました。
実際患者さんに医療用麻薬を使用することがあったら、薬の作用だけではなく、管理方法についても学習しましょう

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