
重症患者の担当をするようになるのは1年目の夏前頃からになるでしょう

もちろん突然一人立ちという事にはなりません。
初日は先輩と一緒に担当して、2日目は自分がメインで先輩についてもらって、3日目は一人で動いているところを先輩が影武者のようについてくる…。
このような流れを数人の重症患者の看護を通して何回も訓練します。
1年目の後期に入るとほぼ一人立ちです。
もちろん先輩達は目を光らせていますが、新人看護師は自分なりに考えながら先輩に相談して患者さんの看護にあたります。
一言に重症患者といっても、それぞれの患者さんの状態によって治療内容や状態が違っています。
でも、どんな重症患者の看護をする場合でも共通して言える注意点があるので、今回はそのお話をします

@重症患者のバイタルサイン測定
急性期の場合は心拍モニター・SPO2モニター・自動血圧計を使用し、ナースステーションとベッドサイドで患者さんのバイタルサインを監視することができます。
その場合は頻回に手動で血圧を測る必要はありません。
重症患者記録(通常のカルテとは違い、バイタルサインの値を1時間ごとの折れ線グラフで記入でき、時間ごとのIN・OUTバランスもチェックできる一覧表)にそのままデータを書き込みます。
ターミナルの患者さんなどの場合は、血圧が低くなってくると(収縮期血圧が60をきるような場合)自動血圧計では正確に測定できないことがあります。
そういう時は必ず水銀血圧計と聴診器を使用して血圧測定します

もっと血圧が下がるとコロトコフ音(血圧聴診の際に聞こえるトクン、トクン、トクン…の音

そうなると今度はとう骨動脈の触診だけでおよその血圧を診ます。
とう骨動脈(両手首の親指側にある動脈で、日頃脈を測るときに一番よく触診されるところ)が触れたら、収縮期血圧が60はあると考えられます。
これは大変便利な指標で、
例えば突然意識を失った患者さんでもとう骨動脈が触れるか、触れないかという方法ですぐに状態を観察できます

(スタッフはいつでも血圧計を持ち歩いているわけではないので…)
急性期の場合バイタルサインの測定は厳密に行いますが、いよいよ臨終が差し迫った状態にある患者Yさんの場合、あえて何度も血圧を測り直したりしない場合もあります。
元気な状態では想像が付きにくいかもしれませんが、呼吸状態が悪く衰弱が著しい患者さんは、看護師がちょっとでも腕を動かすことでさえしんどく感じます

硬縮が強い場合は、痛みを感じる事もあります。
少しでも安楽に過ごせるように、
「とう骨動脈が触れるかどうか」
「一時間当たりの尿量は確保できているか」
「末梢の冷感はどうか」
というように、血圧測定値以外の指標を重視します。
それに血圧が下がってくると、付添のご家族がとても心配されます。
何度も測ることで余計に不安をあおる場合があるので、言動にも注意が必要です。
A褥創ができやすい部位
褥創予防のために専用のマットやエアマットを使用したり、体位変換をすると思います。
仙骨・大転子部・踵部・踝(くるぶし)は褥創の好発部位なので、比較的注意して看ていると思います。
でも褥創が出来やすい所はそこだけではありません

同じ方向の横を向く癖がある患者さんなら「耳」にも発生します。
人工呼吸器装着中となると、挿管チューブがあたる「舌」「唇」にまで発生することもあります。
こうならないためにも、挿管チューブの固定の位置を少しずつ変えたりして工夫します。
ただしこの操作は絶対に一人でしてはいけません

挿管チューブの位置をずらしたり、テープを貼りかえたりするのは、何年目であってもスタッフが2人いる時にしましょう。
カフ圧だけで固定されているチューブの位置をかえるのはとても慎重に行わなければ誤って抜管してしまう危険性があるからです。
呼吸管理下の患者さんの挿管チューブは患者さんの命綱そのもの

命にかかわるような大事故を起こさないためにも、集中力を高めて触るようにしましょう。
あと褥創ではありませんが、モニター管理している患者さんの場合は、心電図モニターのシール(胸に3つ貼りつけるもの)やSPO2モニター(指をはさむ形)、自動血圧計のマンシェットの位置をこまめに変えましょう。
同一部位にばかり付けていると、シールの粘着部や圧で皮膚トラブルを起こすことがあります

特に浮腫がある患者さんの場合は皮膚が薄いのでたった1時間でもSPO2モニターをはさんでいた指が腫れてしまう事もあるほどです。
B尿量
尿量は血圧を保つことができているかの大切な指標です

尿量の最低ラインの目安は「体重(s)×1.0t/時間」です。
例えば体重50sの患者さんなら、1時間に50t出ていればOK

手術後などの急性期の場合の最低ラインは「体重(s)×0.5t/時間」なので、体重50sの患者さんなら1時間に25tでOKです

もちろん水分の排泄は尿だけではありません。
汗などの不感蒸泄やドレーンからの排液量、出血量と合わせてトータルのIN・OUTを算出します

術後の尿量がなかなか増えて行かない時には縫合不全による出血などの可能性を予測しながら観察します。
ターミナルの患者さんの場合も尿量は大切な指標として観察しています。
導尿していない場合はおむつパットの重さを測って記入

最終的には尿量は限りなくゼロに近づいて行きます

まだ血圧が触診でなんとか触れる事が出来ていても、無尿状態となると24時間以内に心停止する可能性が高くなります。
看護師や医師は患者さんの状態を簡潔に知りたい時に
「おしっこどれくらい出てる

というような確認をしている程です。
C整容・環境整備
重症患者の看護の第一目標は「生命の危機的状況を事故なく乗り越える」ということです。
でも、患者さんの処置が終わった後には必ず整容・環境整備をしてから退室するようにしましょう。
患者さんに対する医療行為や看護がそれだけ手厚くされていても、整容・環境整備が不十分だと患者さんの家族ががっかりします

「髭がボーボーで寝巻きも汚れてる…。ちゃんと看てもらえてるの

という気持ちを抱かせないように、細心の注意を払いましょう。
また、環境整備は単なる見た目の問題だけではなく、感染性廃棄物(吸引瓶の中の痰・汚染したガーゼ・使用後の注射器など)をすばやく除去するという意味でも重要です。
それに、引き継ぎが終わって初めて訪床した時に汚染した物品の片づけができていなかったり、使用頻度が高いもの(ディスポーザブルのチューブやガーゼ、脱脂綿など)の補充が間に合っていなかったらちょっと気分悪いです

「出鼻くじかれた…

患者さん・家族だけではなく、自分の後を引き継ぐメンバーの事も考えて行動しましょう。
D報告
前勤務帯と比較して少しでも異変を感じたらすぐにリーダーか医師に報告しましょう。
慣れない頃は患者さんに異変があるのかどうかの判断さえつきにくいと思います。
そんな時は一人で悩む前に先輩に即相談

先輩がどのような判断・行動をとるのかもよく見ておきましょう

先輩が先生に連絡している内容も聞いておきましょう

とても勉強になりますよ

初めから重症患者の看護を完璧にできる人なんていません。
失敗しながら覚える事もたくさんあります。
その失敗が致命的なものにならないようにするためには、やはり自己判断をしない事が重要です

先輩たちのワザを盗むような気持ちで、ここぞとばかりに勉強しましょう。
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